サクラマス レストレーション

 サクラマスはヤマメの降海型で、その生息域は本流だけではなく源流からそして海へと広範囲に及びます。特に環境に対してデリケートな生き物で、サクラマスが生きていける川は、他の生き物にとっても良い川だと考えます。昔から命を繋いできた生き物が、今も生きる川こそ「尊い川」なのではないでしょうか。

 サクラマス・レストレーションは、九頭竜川水系においてサクラマスを河川環境の指標とする活動グループで、全国から九頭竜川に足を運ぶ熱き想いのフライフィッシャー達が活動の中心となっています。代表の安田龍司(名古屋市)は、1980年代より九頭竜川に通い、その環境の変化を間近に見つめてきました。また2003年より、上流の数々の支流に足を運び、サクラマスの自然産卵・自然繁殖がどのくらい成されているのか、調査を開始しました。
 2007年、NHKの本道純一カメラマンが撮影した、永平寺川でのサクラマスの
産卵シーンがきっかけとなり、翌年サクラマス・レストレーションは結成されます。
その映像は、感動と同時に様々な問題を私たちに提起してくれました。そして最初に取り組んだのが、サクラマスの産卵場の造成でした。

 日本においてほとんどの河川がそうであるように、九頭竜川においても、サクラマスが本来産卵するべき支流の上流へは、障害物が多くなかなか辿り着けません。また流量の減少、深淵や伏流水の消失は、夏を河川で越さなければならないサクラマスにとっては、高水温で非常に厳しい生息環境となっています。たとえ産卵が成就したとしても、その河床は土砂の堆積で硬くしまり、卵や仔魚たちが成育できる環境ではないのです。

 そのためサクラマスを絶やさないようにと、管轄の漁協によって稚魚の放流が行われてきました。私たちは放流する稚魚も、その川の遺伝的固有性を少しでも受け継いだものであるべきだと考えています。他の河川由来の稚魚を放流することは、人間本位の手法に過ぎず、やがてはその川の環境に合わず減らしてしまうことにもつながります。

 私たちは、行政、漁協、研究機関、地域住民、メディアの皆さんたちと連携を深めながら、できるだけ多くの子ども達が参加できる活動を目指しています。
そして、「多様な命の宿る日本の川」の再生への取り組みが、あちらこちらに伝播していくことを願って止みません。
代  表 : 安田 龍司 (愛知県 名古屋市)
事務局 : 天谷 菜海 (福井県 永平寺町) このブログを管理・記載しています。
      nami@amaya.ac.jp


第19回 日本水大賞【環境大臣賞】
それまでの活動内容をまとめたものがPDFでご覧いただけます。
日本河川協会さんのHP
多様な命つながる九頭竜川へ 〜サクラマスを河川環境の指標として〜