福井市の「里川」認定

 私の住む永平寺町。福井市に隣接しているこの町に、サクラマスや

サケが帰ってくるのは、奇跡のような話だ。水路と化した身近な故郷

の小さな川。そこに住む人達がどんな風に心を向けるかで、その川の

未来も変わってくると思う。

 

 平成十九年、サクラマスレストレーションが結成される前の年の

こと。私はすでに九頭竜川の保全活動を始めていたこともあって、

福井市の「里川づくり推進事業」の「里川づくり検討会」の委員に

選ばれた。福井市治水記念館の館長である平井博政先生は、私の

小学校の恩師であり、自然を愛する心を育んでくれた恩人でもある。

 平井先生も検討会の委員の依頼を受けていて、同じテーブルに

私を推薦して下さったのだ。

 検討会では、候補地の川の視察や、住民のプレゼンテーションが

行われ、委員の投票により福井市の里川として6ヶ所が認定された。

 

 そして今年、この里川の認定が拡大されることとなり、私も再び

検討会の6人の委員のひとりとして委嘱を受けた。(委員長・福井

大学工学部 野嶋慎二教授)そして前回選ばれなかった2ヶ所も含

めて、候補地の5ヶ所すべてが、福井市の里として認定される

こととなった。

 今回九年ぶりにこの検討会に参加させていただき、何が驚いたか

というと、自分に一番驚いた。前回とは全く違う視点で、川を見る 

ことができたからだ。活動も十数年と続けていくと、専門性が増し

ていき、こういったことに関する選別の目は厳しくなるのが常かも

知れないが、「こういう形もありだな」という柔軟な捉え方ができ

るようになった。それぞれの川の持つメッセージを、受け取る器が

大きくなったのだとしたら、我ながら嬉しいことだ。

 

 里川はその地域の湧水地も含め、かつては飲み水や炊事、洗濯と

いった生活用水として、また子ども達の格好の遊び場として、そこ

に住む人達にとってとても身近なものだった。私は子どもの頃、

福井市の新田塚に住んでいたが、家の近くには小さな川が流れてい

て、小鮒やオタマジャクシを捕まえて日が暮れるまで遊んだ。

 それから、知らない間に川には護岸が施され、田んぼの上には

農薬散布のヘリコプターが飛んだ。気がついたら生き物の姿は消え

ていた。それを知った時の喪失感を、私は今でも忘れない。空しい

現実だった。

 今回、里川の候補地として手を上げた人達は、かつて私のような

喪失感を味わった人達なのかも知れない。そのまま目をそむけるか、

それでも尚、身近な川に愛着を持ち続けるか。歴史や伝統を語り続け、

石積みを再生し、清掃を続け、花を植える。子ども達の遊びの場と

なり、ホタルがよみがえった里川もある。

 里川とは、そこに住む人達の「心のありよう」だと思った。